今回はSDGs2: 飢餓をゼロに、についてです。
フィジーを含め新興国といえば、この飢餓の話題は切っても切り離せない話というイメージがあります。
新興国の栄養が偏った貧しい食事、痩せてしまった子どもの写真や映像をメディアが映し出してきました。
日本人を含め世界の多くの人々が、新興国ではこの飢餓の問題に苦しみ、先進国とは全く異なる生活をしている人々が多いのではないかと想像しています。
では本当に現代においてもこの飢餓が最大の課題なのでしょうか。
今回のフィジーにおける飢餓と食の安全に関する記事を読んで頂く中で、新興国の課題も大きく変化していることが改めて認識して頂けると思います。
SDGs2: 飢餓をゼロに-飢餓と食の安全
フィジーはVNR-Voluntary National Reviewというレポートを発行しています。
これは変革をもたらす2030アジェンダとその17のSDGsの実施に関する包括的なレビューが出来るフィジー初のレポートとなっています。
これまで外からは見ることが出来なかった取組みについて、透明性を持って知ることが出来るようになったのです。
この記事では、このフィジーが発行するレポート、VNRのSDGs2を読み解いていきましょう。
数字で見る飢餓と食の安全
ではまず、このレポートに出てくる主な数字から全体を把握してみましょう!
- 栄養不足のケースは1997年の5.2%から2006年には4.2%に減少
- 2004年から2015年の間、5歳未満の発育不全の子供の割合は7.5%から4.9%に減少
- 農業分野における政府開発援助は2000年のFJ$2.06 million(約1億円)からFJ$17.1 million(約8.5億円)に増額
- 世界保健機関はフィジーでの死亡の84%が非感染性疾患-NCDが原因で発生したことを明らかにした
飢餓と食の安全における課題
全てのフィジー人が、十分な品質と栄養価の高い食事をとる権利があります。安心できる食事を全ての人がとれる国を目指していく上で、最も注力したいのが農業と漁業です。
フィジーのような島国にとっては気候変動が食の安全を考える上で最も脅威になってきます。
農業や業業は気候変動の影響を特に大きく受ける産業です。
2001年から2017年に実施された調査によると、サイクロンや洪水によって発生した被害額はFJ$791 million(約395億円)にも達します。
調査によると、これから農業・漁業の気候変動に対する抵抗力を上げていくには、10年間でFJ$34 million(約17億円)も必要ということがわかっています。
フィジーのベースラインデータを集める中で注目すべき点は、栄養不足、発育阻害、栄養失調といったものに関するデータです。
またそもそも、このデータ収集においても新たな課題が浮き彫りになりました。
データの可用性-Availabilityについてはデータ間で大きなギャップがあることが今回わかり、課題として捉えています。
食の安全確保に向けた財政サポート
食の安全については国として大きな予算をつけて対応してきました。
フィジーの年間国家予算における食料安全保障と栄養のための国内資金の動員は、2016年から2017年のFJ$ 50.8 million(約25億円)から、2017- 2018年にはFJ$ 117.9 million(約58億円) 、2018- 2019年はFJ$ 124.5 million(約62億円) と連続して増加しています。
同様に、農業分野における政府開発援助-Offical Development Assistance(ODA)は2,000年のFJ$2.06 million(約1億円)からFJ$ 17.1 million(約8.5億円)に増額しています。
飢餓と栄養不足
栄養不足の割合
割合で見たときのフィジーにおける栄養不足の人口は非常に低いです。
しかしながら、ベースライン評価によるとフィジーがSDGs2を完全に実現するにはさらに数年かかることが明らかになっています。
栄養不足のケースは1997年の5.2%から2006年には4.2%に減少しました。
国立食品栄養センターから入手した5歳未満の過体重および消耗症の子供に関するデータも、栄養失調の子供の数は減少していることを示しています。
ただ一方で、2006年以降4.6%と増加しており注意が必要です。
子供の栄養不足
子供たちの身長を観測しながら発育障害のデータを収集し、身長に対して体重が不足する子供たちの指標として使っています。
2004年から2015年の間に、フィジーで5歳未満の発育不全の子供たちの割合は7.5%から4.9%に減少しました。
SDGs2のいくつかの指標はまだ完全には達成されていません。 このギャップを埋めるために、フィジー政府はフィジー人が適切で栄養価の高い食品を確実に入手できるようにすることを約束し、農業、漁業、食料安全保障の研究開発に投資しています。
飢餓と栄養不足に加わる栄養失調と肥満の問題
栄養不足と微量栄養素の欠乏が続いている一方、全ての年齢において肥満の有病率、およびそれに関連する非感染性疾患(NCD)が全国的な問題となっています。
2016年、世界保健機関はフィジーでの死亡の84%がNCDが原因で発生したことを明らかにしました。
フィジーはこの栄養失調と肥満という問題に対し、農業、健康、教育、貿易、その他のセクターの相互作用と重要な役割を強調しながら、計画と実施能力の観点からいかに取組んでいくのかということを明らかにしなければなりません。
食の安全確保に向けた取組み
なぜ食の安全に取組む必要があるのか
貿易や観光行政は積極的なマーケティングやブランディングにより”フィジー産””フィジー育ち”の地域生産品をプロモーションしています。
しかしその一方で、食の安全については本気で効率性改善に取組むことが極めて重要です。
そしてそれは、農業や漁業といった主産業の市場構造の改善だけでなく、最終的にはコモディティ化により下落した市場価格の適正化にも貢献することが期待できます。
今後の食の安全の取組み計画
今後5年間で、農業部門は、二国間検疫協定に基づく商品(ナス、オクラ、ポーポー、唐辛子、パンノキなど)、および米、タロ、キャッサバ、果物と野菜、カバ、オーガニック製品、畜産および乳製品の生産を増やすための重要な介入を行っていく予定です。
機械化と新技術は政府の支援と民間セクターのパートナーシップを通じ、特に水耕栽培、家畜と乳製品、有機農業、農産物(生姜、米、新鮮な果物と野菜、フルーツドリンクなど)の加工のために採用され導入されていきます。
政府は漁業の分野における食の安全性を高めていくため、魚の資源の減少、養殖業の成長の鈍化、水産資源の付加価値の低さ、気候変動の悪影響など、既存の開発課題に取り組む計画を立てています。
間もなく国家漁業政策が完成します。
これは養殖のさらなる成長を支援し、既存の沖合および沿岸/沿岸資源の持続可能な管理に長期的に焦点を当てたものです。
今後はこの国家漁業政策が沖合、沿岸/沿岸および水産養殖活動の管理と開発を導くでしょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
飢餓をゼロにしていくことは非常に大切ではあります。
その一方、数字にも表れている通り現在のフィジーの深刻な課題は肥満率の増加にもあります。
ここには長年育まれてきた文化や趣向も背景にあると思いますが、飢餓・食の安全の確保と並び今後さらに力を入れていくべき項目になりそうです。
この点については次回以降、もう少し詳しい数字やデータを期待したいです。
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