今回は起業家に 「知りたかったけど他には載ってない実際のところ」をお届けするインタビュー記事第五弾です!
今回のテーマは教育です。
子どもたちの将来に向けて何ができるのか、もう一度深く考える機会となりました。
皆さんは起業する人を特別な人と思っていませんか?
起業を考えても起業の仕方が分からず、ぼんやり考えて終わっていませんか?
社会人の働き方は多様化し、起業なんて考えたことなかった人も起業する日が来るかも知れません。
起業はもう誰にとっても遠い存在ではなくなりつつあるのです。
このシリーズを読んでいただければ、起業を考えたことのない方でも起業のイメージや具体的な起業の仕方を知ってもらうことができます。
でも実際の苦労やリアルな話を教えてくれる場所はなかなかありません。
だからこそ、この記事では普段はお話してもらえない創業時の地道な活動や、ディープな裏話をSIFメンバーが遠慮なく掘り下げ公開します!
今回は関東最大規模のインターナショナルスクール、ローラスインターナショナルスクールオブサイエンス(以下、ローラス)学園長であり、女性起業家でもある日置麻実さんに登場していただきます!
ローラスは日本で唯一のサイエンス・インターナショナルスクールです。生徒が自分の未来を切り拓く能力とスキルを身につけ、この先行き不明で不確実な時代においても、世界と社会にポジティブに貢献できるイノベーターになることを目指しています。
【プロフィール】
- 日置麻実さん
- ローラスインターナショナルスクールオブサイエンス 学園長
- 東京、神奈川に7校のSTEM*インターナショナルスクールを運営。スクールでの教育活動を通して、未来のイノベーターをたくさん輩出することを使命とする。外資系金融機関出身。上智大学外国語学部英語学科卒。
■ 創立:2001年10月1日(創立)
■ 生徒数:約1,000人(2021年4月1日現在)
■ 講師数:
・外国人講師、スタッフの数:90人(講師の国籍:イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア 他)
・日本人講師、スタッフの数:90人(2021年4月1日現在)
【取材】SIF 2名 川上(代表)・RIKUHIRO
*STEM教育:科学・技術・工学・数学の教育分野、それぞれの頭文字を取った言葉。新たな時代に必要とされる自発性、創造性、判断力、問題解決力を養い「自分で学び、自分で理解していく子ども」を育てる教育法
インターナショナルスクール設立に至ったきっかけと経緯
ケンブリッジ国際カリキュラムと独自のSTEAM教育を組み合わせたカリキュラムに強みを持つローラス。なぜ今、日置麻実さんが教育にサイエンスが必要と感じているのかを伺います。
RIKUHIRO:日置さんはもともとサイエンスを教育に取り入れたいという想いが強かったのですか?
サイエンスをきっかけに英語を学んで欲しい
もともとランゲージスクールを経営しており、英語を学ぶきっかけとしてサイエンスを取り入れました。
ただ単にフラッシュカードなどで学ぶよりは、サイエンスの方が子供たちが熱中してくれると思ったんです。
その予想は大当たりしました。
サイエンスは子供たちの好奇心や集中力を引き出してくれ、最近では大人もびっくりするようなサイエンスプレゼンテーションやレポートが出来上がるようになりました。
レッスンの満足度も上がり、子供達が「なぜ?どうして?」と疑問を積極的に英語で先生に問いかけるので、
先生達もそれに応えるべく、魅力的なレッスンやサイエンスエクスペリエンスを提供してくれるようになりました。
当初は英語を学ぶきっかけとして始めたサイエンスでしたが、今ではサイエンスを中心にSTEMやアート、起業家マインドを学ぶようになりました。
もちろんスクールとして他の教科に手を抜いていることはありませんが、どの教科を通してもサイエンスに繋がる「探求マインド」を育む教育を第一に目指しています。
「疑問を解決するって楽しい」を伝えたい
例えば「空はなぜ青いの?」「海はなぜ青いの?」という子供たちの純粋な質問に、親御さんはすぐに答えられるでしょうか。
どんなに子ども達が素晴らしい疑問を思いついても、大人にうやむやにされたり後回しにされてしまえば疑問を持ち、問いかけることをやめ、心の中にしまい込んでしまいます。
だからこそ、早いうちに子供たちの疑問に本気で向き合う大人が近くにいる環境を作ってあげたいと思っています。
そして「疑問を持ち、探究するって楽しい」というマインドセットを育んであげたいんです。
母親としての感覚
わたし自身、3人の子どもを育てる母親としての目線も持っています。
自分の子供達の目の輝きや探究心に応えるべく、先生やスタッフと一緒になってカリキュラムやレッスン、スクールイベント、ワークブックやプレゼントにいたるまで真剣に考えてきました。
その結果、子供達や親御さんから好評いただき、ランゲージスクールやSTEMインターナショナルスクールを大きく成長させることができました。
今ではSTEMインターナショナルスクールを7校展開するまでになりましたが、随所に母親が真剣に子供の将来や教育を考える心が込められていると思います。
崇高な教育者になろうというよりは、むしろ母親の直感というのも大切にしています。
サイエンスを取り入れた教育とは
子ども達にはたくさん体験をして欲しいという日置麻実さん。具体的にどのような授業が行われているのか伺います。
RIKUHIRO:サイエンスを取り入れた授業ってあまりイメージが湧かないのですが、実際にはどのような授業なのでしょうか?
遊びに近い感覚
私たちはハンズオンの実験や、身近な現実と結びついたサイエンスというのを意識しています。
例えば、無人島に漂流したという想定で、いかに生き延びるかをみんなで考えるプロジェクトを昨年行いました。
「まずは生きていくための水が必要、じゃあどうやって飲み水を自然から作るんだろう」
ここで過去に水の蒸発と結露の実験をしていたことを応用し、飲み水を作ります。
「食べ物はどうやって確保しよう、じゃあ魚を捕まえるトラップを作ってみよう」
「衣服はどんな材料で作ると保温性が高いのか?」
そして最後は自分たちで筏(イカダ)を作ってみるという所まで、レッスンで習ったサイエンスを応用して生き抜くためのロールプレイをしていきます。
サイエンスは子どもたちにとっては遊びに近いんだと思います。
土曜日の夜に、明日はスクールがないと言って泣く子が各校で出るくらいです。
子どもたちが本当に楽しんでくれてることを感じられるのが、心から嬉しいですね。
プログラムを本気でつくるチームワーク
今でこそ海外の有名な大学出身者や、Early Childhood Educationを専攻された先生から、一緒に働きたいという応募を多く頂いています。
でも当初は私たちが力を入れるSTEM教育についても、理解を得られない先生もたくさんいました。
私たちは真剣に子供達の将来や教育と向き合いたいと思っているので、先生のカリキュラムやレッスンのクオリティにもこだわり過ぎるくらいこだわります。
今、ローラスで活躍している先生やスタッフに共通していると感じるのは、アントレプレナー(起業家)気質ですね。
「新しいことにもどんどん挑戦していきたい」というスタッフが非常に多く働いてくれています。
自然とSDGsに繋がる
私たちが力を入れているエンジニアリングデザインプロセス*自体が、社会に存在する課題を起点としています。
そしてSTEM教育もSDGsも、アントレプレナーシップと非常に親和性が高い考え方であると思います。
つまり、STEM教育やSDGsを実践していくことは、事業を立ち上げる、起業にも繋がっていく話だと捉えています。
*エンジニアリングデザインプロセス:優れたエンジニアが持つ思考プロセス。要求を見つけ出し、それを満たす策を実現していくプロセス。
文化祭の前日がずっと続くような働き方
子ども達が授業を楽しみにするような教育。では、授業をする先生はどのような想いで授業をつくっているのでしょうか。
RIKUHIRO:求人サイトの掲載を拝見したところ、評価もすごく高かったのですが、先生にとってどんなところが魅力だと感じますか?
盛りだくさんのイベントを全力で
先生やスタッフからの提案で良いなと思ったことは全部やります。
とにかくPDCAが異常なスピードで回っていきますね。
花火のように打ち上がったやりたいことを、みんなで本気になって実現していく。
例えば今、「ドリームプロジェクト」というプロジェクトがあります。
ローラスが開校予定の中等部、高等部の校舎のエントランスは吹き抜けになっていて、そこには巨大な恐竜の骨格標本がそびえ立っていたり、ジャングルのような場所に生き物がいたり。
その中の一部はすでに初等部の校舎や「STEM Fair」というイベントで実現してきましたが、常に文化祭の前日のような高揚感と慌ただしさがミックスしたような気持ちで、皆で真剣に「理想のスクールの実現」を考えています。
夢みたいなことでも良いので理想を思い描き、どうしたら実現できるかを皆で考えています。
どんな困難でも楽しむ文化
コロナの前は私自身が海外に出向いて最先端の教育を学んだり、色々な人に会いに行ったりしていました。
残念ながら、今はリアルで移動したり会いに行ったりすることは難しくなりましたが、今でも本やオンラインミーティング、または人の紹介などで様々なことを吸収してどんどんプログラムに取り入れたいアイデアが浮かんできます。
例えどんなにアイデアが難しそうに見えても、ローラスに所属している先生やスタッフは私と一緒になって、どうやったら実現できるかを必死に考えてくれます。
教育を良くしていきたいという想いのもと、困難や逆境をあえて楽しむ。
私たちにはそんな文化が根付いていると思います。
これからの展望
RIKUHIRO:最後の質問になりますが、これからローラスはどのような変化を目指していくのでしょうか。
中等部高等部の設立へ
私たちはプリスクールから初等部、本部スタッフまで、皆で真剣に教育に取り組んでいます。
こんな私たちのスクールを卒業した生徒達を安心して送り出せるような中学、高校が今のところ見つかりませんでした。
海外では当たり前に広がっているSTEM教育ですが、今現在、英語でSTEAM教育をしているスクールは、日本においては本当に少ないんです。
だからこそ、自分達で中等部、高等部を設立することにしました。
初等部よりも更に大きな設備、理想的な教育者の確保、資金面での工面も待ち受けています。
2023年にはオープンしたいと思っているのであまり時間はありませんが、子どもたちがサイエンスを学び続けられる環境を本気で作り上げていくために、最も力を入れています。
オンラインプログラムの強化
もう一つはオンラインプログラムの強化です。
本当は10年前に始めたいという想いはありましたが、目の前のことに追われなかなか手がつけられませんでした。
すでにeラーニングは色んな種類のプロダクトがありますが、まだまだこれから伸びる市場だと思っています。
自分たちの信じる教育をあきらめない
教育方針については誰にも縛られたくないんです。必要だと思ったことはすぐに取り入れたい。
特に国の制限でやりたいことが出来なくなることだけは避けたい、という想いがあります。
そのために学校法人という形にはしませんでしたし、助成金による資金調達はしてきませんでした。
そのおかげで今でも機動力を持って意思決定出来ているのだと思いまし、この方針はこれからも変わることはありません。
SIFの読者に向けたメッセージ
RIKUHIRO:SIFジャーナルの読者はSDGsや社会問題に興味がある方が多いのですが、読者の方にメッセージをお願いします。
すごい大きなことから始めなくても、小さいところからやっていけば良いと思うんです。
私たちはキンダーガーテンの年齢から問題解決に取り組んでいますが、そういう草の根の小さなところから日本を変えられると思っていますし、世界も変えられると思っています。
問題解決って、自分でやろうと思えばできるものだと思うんです。
私たちもそんなマインドで、これからも毎日を文化祭のように楽しみながら教育と向き合っていきたいと思っています。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
本気で子供たちのことを想い、信じた教育を実現したい。
日置麻実さんはその想いに正直という感じが伝わってきました。
そしてその想いに共感した教育者、保護者みんなでつくる環境がとても印象的でした。
これからは自分で考える、能動的に学んでいく意識があるかないかで大きく未来は変わると思います。
この記事を書いている我々SIF(Social Innovation Fiji)も、自分から学ぶこと、「本気で学ぶって楽しい!」と思ってもらえるような英会話プログラムを開発中しています。
フィジーの人々と1対1でお話する機会をご用意し、皆さんにはインタビューを体験して頂きます。
もちろん初めは事前準備、フォローアップと十分なサポートをさせて頂きながら、自らが汗をかきながら学んでいただけるように考えられています。
学校教育にも取り入れてもらい今はシステム上受け付けていませんが、読者の皆さんにも体験して頂けるよう準備をしています。
ご興味があればまたこのSIFジャーナルやTwitterで告知させて頂きますので、フォローして頂けると嬉しいです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!