最近の多くの大学生が耳にしたことがあるであろう、「ガクチカ」。
この4文字は、就活でよく質問される「学生時代に力を入れたこと」の省略形です。私は2022年度時点で大学3年生ですが、1年生の時からこの言葉を使っている人がいました。
なぜこの「ガクチカ」がここまで流行したのでしょうか?
また、この言葉が流行したことがきっかけで、学生時代に就活でアピールできる「何か」を用意することが良いとされる風潮になってしまったように思います。
この記事を読んでいる方の中にも、「ガクチカがない!」と焦ったり、他の人がしている活動を知って自分と比較して落ち込んだりした経験をした方もいるのではないでしょうか。
しかし、そのことで悩んだり焦ったりする必要はありません。
この記事は「ガクチカ」に悩む方々にとって、自分なりの答えを出すためのヒントになる内容となっております。同時に「ガクチカ」という言葉がはらむ危うさも考察できるはずです。
「ガクチカがない」とか言うけれど、そもそも「ガクチカ」ってなに?
そもそも、どうして「ガクチカ」という言葉が生まれたのでしょうか。この章では、「ガクチカ」という言葉が使われるようになった経緯をご紹介します。
「ガクチカ」は企業が学生を知る手がかりになる
前述の通り、「ガクチカ」は「学生時代に力を入れたこと」の省略形です。
就活ジャーナルというメディアに掲載されている調査では、「就活中のES・面接で「ガクチカ」を聞かれたことはありますか」という質問に対して76.3%が「はい」と回答しています。
それくらい定番の質問になっていますが、なぜ聞かれるのでしょうか?
理由は、学生をより深く知るための手がかりを得るためだと言われています。
私たちも普段初対面の人と話す場面で、まずその人が普段何をしているのか聞くことが多いはずです。それから段々と話を広げていくうちに、「この人となら仲良くなれる気がする」とか「あんまり話が合わなそうだな」とか探っていくのが定石ではないでしょうか。
企業側も自分達の企業と目の前の学生が本当にマッチするのかどうかを判断するための入り口として、「ガクチカ」を聞いています。
「ガクチカがない」状況を避けるために予め用意しておくようになった就活生
しかし、近年ではこの質問があまりにも定番になってしまったため、学生が面接で聞かれることを見越して喋る準備をしておくことが多くなっていきました。
よって、「学生時代に力を入れたこと」を上手く話せるように意識されていくうちに「ガクチカ」という言葉が段々と使われるようになってきたのではないでしょうか。
実際、毎日新聞では2014年に初めてこの言葉が掲載されたようです。その後、2018年時点でマイナビの〈就活生の間で流行した『就活用語』ランキング〉では「ガクチカ」が1位にランクインしています。
「ガクチカがない」からと言って「ガクチカをつくる」ことの違和感
「ガクチカ」を聞かれることを見越して喋る準備しておくことが就活のお決まりになるにつれ、今度は何が起こっていくでしょうか。
面接で喋って評価してもらえる経験をしておくために、ボランティアやインターンなどをするケースが増えていきます。そこで、本来あるべき就活の姿とのズレが生じるのです。
以下で、詳しく考えていきましょう。
「ガクチカがない」学生も、大切なのは自分が本当にやりたいことをやったかどうか
もちろん、自分の経験を言語化して上手く伝えられるようにしておくことは大変重要なことです。
一方で、「ガクチカをつくる」という、最初から得られる結果が分かるような経験や学びをしにいくという考え方もあるようです。「ガクチカ」という人が評価してもらえるような経験を自分の中に持っておくことの安心感がそこにはあるのではないでしょうか。
学校の勉強も自分が学びたいから学んでいるのではなく、いつの間にか「A」という評価を取るための学びをしている、段々と自分の中のモチベーションが「自分がやりたいから」なのか「他人に評価されたいから」なのか、どっちなのか境界線が曖昧になっていくことがあると思います。それで私も悩まされたことがありました。
「ガクチカ」も同じように、言葉が記号化し、本来であれば結果として「学生時代に力を入れたな」と実感できるものが、最初から「ガクチカ」と評価されるために経験をするということが発生しています。
そうなると、自分が「やりたい」ことよりも「やった方がいい」ことを優先してしまう事態になってしまうのではないでしょうか。
就活の本質を見極めることで「ガクチカがない」と焦らずに済む
他人の評価軸で「ガクチカをつくる」人が増えていくと、就活に合わせて自分を繕っていくようになり、採用する側も本当に自分たちの企業にマッチしている学生を見極めるのが難しくなると予想されます。
そうなると入社後に期待値のズレが発生する可能性が大きくなり、企業側、学生側双方にとって良い未来があるとは思えません。
ここでは、「ガクチカ」になると思って頑張ろうとしている方々を批判したいのではありません。
極端に他人の軸で自分の学生生活を組み見立てていくと自分を見失い、頭を悩ませる人が多くなるのではないか、という「ガクチカ」がはらむ危険性をここでは強調させていただきます。
そこで、皆さんにぜひ知っていただきたい考え方をご紹介します!
「ガクチカが本当にない」という人必見!充実したキャリアへのアプローチ方法
人生は、偶然の出来事の連続によって導かれていくという考え方があります。
また、自分にとって満足のいくキャリアを獲得していった人たちは、その偶然のできごとを意図的につくり出すことに積極的であると言われています。
一体、偶発を意図的につくるとはどういうことなのでしょうか?それを今から解説していきます!
偶発を意図的に生み出すことで今「ガクチカがない」と悩んでいても魅力的なキャリアを築ける
人生は偶然の出来事の連続によって導かれるという考え方は、米・スタンフォード大学のジョン・クランボルツによって発表された計画的偶発性理論のことを指します。
彼がどんなことを述べているかというと、
キャリアは100%自分の意のままにコントロールできるようなものではなく、大部分、偶然の出来事によって方向付けられているという事実がある。最終的に満足のいくキャリアを獲得した人には、むしろそうした偶発を積極的につくりだし、自分の潜在的可能性を大きく開いた跡が見られる。
というようなものです。
ここでの「キャリア」とは職歴のことのみならず、職業以外の生活範囲までも含みます。経験した仕事や獲得した地位だけではなく、自分なりの信念や価値観のことなど、自分の行動を突き動かしている核心の部分のことです。
大きな目標や目的を見据えて、そのために必要と思われる機会を選択し積み上げるような、100%必然でできた人生などなく、いくらかの偶然によって適度に流されるということです。
クランボルツは、そうした自分を成り立たせている価値観が偶然の重なりによって導かれていることに注目しています。また、その偶然の出来事をある程度意図的につくり出せることにも言及しています。
「自分がどんな生き方をしていたいか」という考えだけでも持っておくことで、それに基づいた選択や生活が連続していくのだということです。
形ある目標や結果が明確に見えなくても、方向性だけでも定まっていれば、それに関連した情報や気づきを得ることができるはずだからです。
よって、クランボルツの言葉にもあるように
将来が見通せないことをいたずらに不安がることはない。キャリアを切り拓いていくしなやかさが重要。
なのです。
「ガクチカが本当にない」ことを解決する!偶発を生み出すために明日から必要なマインドとは?
そんな偶発性を生み出す「しなやかさ」は、具体的に以下の5つの言葉に落とし込まれています。
- 好奇心 ── 新しい学習機会の提案
- 持続性 ── めげない努力
- 楽観性 ── 新しい機会を「実現可能」と捉える
- 柔軟性 ── 信念・概念・態度・行動を変える
- 冒険心 ── 結果が不確実でも行動に移す
目の前の出来事をただ体験するだけでなく、その環境を自分がどのように受け止めるかが大切です。
日常生活で、例えば行きたかったカフェが閉っていても柔軟性があれば「また今度行けばいいや」となりますし、または好奇心で「この街にある他のカフェに行ってみよう」とか、はたまた冒険心を持って「飲んだことのないドリンクを頼んでみよう!」となるかもしれません。
「何をするのか」よりも「どう在るのか」を意識して過ごせれば、自分が思い描いていた自分に漂着していた、というようなことが現実になるはずです。
上記の5つを意識するだけでも捉え方が変わり、何てことなかった今の環境も、チャンスに変わるかもしれません!
「ガクチカが本当にない」からといって「つくろう」と思わなくてもいい
「ガクチカが本当にない」と焦る必要はない
「計画的偶発性理論」という考え方をご紹介しました。
何をするにしても、自分がどんな想いを持ってそれに臨めるかが重要なので、「ガクチカ」として挙げる経験はなんでもいいです。よって「ガクチカがない」というように悩む必要は本来ないはずです。
なので、「ガクチカをつくる」ことは一旦置いておいて、「計画的偶発性理論」で挙げた5つの特性を意識しながら生活してみましょう。それをいつも心に留めておけば、悲観的になることも少なくなるはずです。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
結果的に就活の面接で喋るような「ガクチカ」は、いかにそれまでの自分の経験を言語化して伝えられるかどうかだと思います。なので、大学生活中は「ガクチカのために」ではなくてまず目の前のことに集中して取り組んでみる姿勢が大切なのではないでしょうか。
記事の冒頭でも述べたように、この記事では「ガクチカ」に悩む方々にとって、自分なりの答えを出すためのヒントになる内容となるように書いてみました。
少しでもこれを読んだ皆さんにとって、そんな記事になっていることを願っています。