今回は起業家さんに新規事業立ち上げにまつわる「知りたかったけど他には載ってない実際のところ」をお届けするインタビュー記事第六弾です!
食という切り口から「やさしく生きるきっかけづくり」を事業化した、ごゆるり代表の真崎里砂さんにインタビューさせていただきました。
ごゆるりは、一人一人に愛を込めた「一生に一度のひとさら」を提供する完全予約制の食堂、そして、一人一人の食生活を伴走するオンライン献立メンタープログラムを主な事業としています。
ごゆるりで様々な事業にチャレンジしてきた経緯やきっかけから、起業に関する事まで皆さんの気になることを全てお伺いしたので是非最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 東京外国語大学国際社会学部東南アジア地域専攻
- 学生団体アイセックにてフィリピンにインターン
- メルボルン大学に派遣留学、留学中にフードロスにアプローチする事業を設立
- リクルートに新卒入社、飲食事業の営業部門で新人賞受賞
- 2019年に食堂ごゆるりを創業
企業サイト:https://goyururi-hitosara.com/
「ごゆるり」設立の経緯ときっかけについて
Q:起業しようと思ったきっかけと、何故このビジネスモデルを展開していこうと思ったのかを教えてください。
描いていた理想像をフィリピンで体験
元々小さい頃からなんとなく「世界中のみんなをhappyにできる人間になりたい、どうやったらそんな人間になれるんだろう」みたいなことを英語の教科書に出てくるマザーテレサやマンデラのような多くの人を救ってきた偉人たちに関する話を読みながら、ぼんやり考えているような変な子でした。
ただ、自分は何をしたいのか、どうやったらそれを実現できるのかは具体的に考えられないまま、高校生までは全力で陸上部と勉強に打ち込んでいました。
転機は大学生の時です。アイセックという海外インターンシップを運営する学生団体に入り、自分自身もインターンでフィリピンに行く機会がありました。
そこで私は「スポーツで村のみんなを元気にするプロジェクト」をチームで実行したんですが、プロジェクトの最後のスポーツ大会で、村のみんな、世界中から来ているインターン生たちが集まった空間で、宗教も年齢も性別も母語もちがう人たちみんなが一緒に笑っている場面を目の当たりにしたんです。
その時私は、自分がぼんやり思い描いていた「世界中のみんながhappy」ということが実現できることを身をもって体験し、「私は人生を通して、こういう世界を作っていきたい」と強く思い帰国しました、当時20歳でした。
オーストラリア留学で理想を一つの形に
「私は人生を通して、みんながhappyな世界を作る!」と思ってフィリピンから帰国した私は、それを自分が大好きで全人類にとって必要な「食べること」という切り口から形にしたいと考えていました。
翌年にメルボルンへの留学が決まっていたので、何か食関連のおもしろい活動はないかなと思っていたところ、たまたまテレビで「サルベージ・パーティ®︎」と呼ばれる活動を知りました。
そのパーティでは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物をシェフが美味しい料理に変身させて、みんながおいしく楽しみながら「食品ロス」という問題について知る、という内容でした。
「みんなで美味しく楽しみながら、食品ロスという世界の問題についても知るきっかけになる、これを世界中の留学生がいるメルボルンでやったら一石四鳥くらいじゃないか・・・」と思い、テレビに出演していたサルベージ・パーティ®︎代表の平井巧さんをすぐにSNSで検索してDMを送りました。
平井さんからはすぐにお返事をいただき、会っていただけることになり、日本での活動内容を聞いてメルボルンで自分もパーティをやろう!と決心しました。
メルボルンでは、大手スーパーから廃棄対象のまだ食べられる大量の食材を譲り受け、美味しい料理に変身させてパーティを開きました。
そこにいろいろな国の学生を呼んで、みんなで美味しく学ぶのと同時に、そこで集めた参加費を途上国の子供達に給食を提供しているTABLE FOR TWOという団体に寄付するというサイクルを確立しました。
このサイクルが多くの共感を呼び、最終的には10カ月間で30人ほどのプロジェクトメンバーと、300人を超える人に参加していただくことができました。
たくさんの人の共感と応援を得て、大きなやりがいを感じていたのと同時に、場を作っている側の自分たち自身がかなりきつかった、非営利(まったくのボランティア団体)であることに限界があると感じ、社会にとってポジティブなことをサステナブルに続けていくためには、ビジネスの世界も知る必要があると考えて、自分を鍛えられる環境としてリクルートという会社に新卒で入ることを決めました。
大手企業リクルートでの経験
自分が実際にリクルートに入社して、会社員として働く中で、最高の仲間や先輩に恵まれて刺激的な毎日を過ごす一方で、目の前のミッションに追われて本当に余裕がなくなってしまい、学生の頃から食品ロスについて活動をしたり環境について配慮してきたはずだったのに、まったくその余裕がなくなってしまっている自分がいました。
無意識に自販機でペットボトルを買っている自分に気づいた時にハッとしました。周りを見ると、私だけではなく、みんなそうだということに気がつきました。
ペットボトルの飲み物を1日に何本も買い、コンビニでプラスチックのゴミがたくさん出るご飯を昼も夜も食べて、全然自分にも環境にも優しくない生活をしている。
その時、自分に余裕がないとベクトルが自分にばかり向いて、外の世界のことを全く考えられなくなって、余計に辛くなるんだな、と思いました。
そんなもやもやしている時期に、改めて環境について学ぶ機会に参加し始めたりしました。
3年目がスタートする2020年3月〜4月。ちょうど新型コロナウイルスが感染拡大し始め、全国の学校に休校要請が出たタイミングに、改めてどうやって人生を終えたいかと自分に問い直しノートに書き出してみたところ、達成したい状態が3点ありました。
1つ目は、自分自身が好きなことをやって幸せに生きていくということ。
おいしいものを食べて、世界を旅して生きていきたい。
2つ目は、自分にとって一番大切な身近な人たち家族友人を幸せにするということ。
一緒に時間を過ごしたり、おいしいごはんを囲んだり。
そして3つ目が、社会の課題に何か一つチャレンジして、自分はこれを社会に残せたって言って人生を終えること。
2点目までは会社員として働いてお給料をもらっていれば実現できるけど、3点目についてはこのままではできない。
その時私は、3年間やり切ったら会社を辞めて自分でチャレンジしようと決意しました。
食で人を幸せにする「ごゆるり」創業までの奮闘
Q:起業で大変だった事は何ですか?
コロナウイルスによる転機と苦労
コロナがあったから完全に独立して「ごゆるり」を運営していこうと決意することができましたが、2021年の1月ちょうど日本で2回目の緊急事態宣言が出てしまいました。
元々完全予約制の食堂と、もう一つ別のプログラムを実施予定だったのですが、両者ともに料理を提供するという内容だったので、対面の機会が制限されたときに何もできないという壁にぶつかりました。
そこで2021年の2月から、オンラインの事業をスタートしたのですが、中々事業モデルが確立できず、苦労しました。
新規事業モデルへの不安
新しいオンライン事業は「りぶ ごゆるり」というのですが、りぶ ごゆるりの事業を自信を持って提供できるようになるまでには時間がかかりました。
最初は全く形がないところから作り上げて、お試しでプログラムを体験してくれるモニターを10人程集め、フィードバックをもらいながらプログラムの中身をどんどんブラッシュアップしていきました。
その中で、全力で約3カ月間向き合っていたお客さんにこのサービスに支払える金額を聞いたところ、自分の想定していた金額の3分の1にも及ばず。。。
新規ビジネスモデル確立のきっかけ
そんなことは言っても止まってはいられないので、まず身の回りの友達から、食生活に悩んでいる・変えたいと思っているという人たちに話をしてみることから再出発しました。
その時に導入したのが”Pay as you feel”という支払い制度です。
申込時点では支払いは無しで、プログラム終了時に自分の満足度に応じた金額をお支払いいただくという制度で、この制度の導入により、やってみたいと言っていただける友人が、一人、また一人と増えていきました。
そうすると、「毎日カラフルなご飯がたべれてしあわせ」「一緒に住んでいるパートナーとの間でありがとうの回数が増えた」「自分でごはんをつくるようになって、自己肯定感が高まった」などたくさん感謝のことばをいただいて、喜んでもらえてその事業に少しずつ自信が持てるようになりました。
今ではモニター含め40人弱のお客様にこの事業を体験していただきました。
自信がなかった初期段階で、まず身の回りの悩んでいる友人たちから声をかけ、Pay as you feelの支払い制度を導入したことで最初の参加ハードルを下げ、一人一人に向き合っていったことがビジネスモデル確立のきっかけというか自信を持てるようになりました。
オンライン事業「りぶ ごゆるり」へのこだわり
Q:りぶ ごゆるりの強み、他社と差別化はどのようにはかっていますか?
一人一人の食生活に合わせたコーディネート
「りぶ ごゆるり」は、一人一人のライフスタイルに合わせて、献立・レシピ・買い物リストをコーディネートするオンラインの献立メンタープログラムです。
これに対峙するサービスとしては、冷凍のミールキットや出張シェフなどの料理代行サービスが存在します。
ただこれらのサービスは通常の食費にプラスアルファで毎回別途費用がかかってくるのに加え、それらのサービスを利用することはその人たち自身の力にはならないので、一生つづく「食事」という営みに対してサステナブルなソリューションとは言えないかなと思います。
一方で「りぶ ごゆるり」は自分や家族がハッピーになる食事を自分で作る力を身につけてもらうプログラムなので、最終的なコストパフォーマンスは代行サービスを超えると思っています。
また、自炊を助けるほかのサービスとして、AIが献立を自動的に作成する無料のアプリも存在します。ただ、個々人のその時々の調子や忙しさ、好みの詳細までを踏まえてカスタマイズできるものは現状存在しないですし、ただ献立を提供するだけではなく、それが誰かによって自分のために考えられている/自分の自炊を見守っている存在がいる、ということ自体が、大きな差別化ポイントだと思っています。
今後起業を考えている方に向けてアドバイスをお願いします!
一番は、先ずやってみなければわからないので行動してみてください。
自分が本当にやりがいを感じて、わくわくしている瞬間を見つけ、決めたら即行動してみる事が大事だと思います。
まとめ
今回も最後まで閲覧いただきありがとうございました。いかがしたでしょうか?
真崎さんの「ごゆるり」に対するパッションやビジョンは、真崎さん自身が幼心から抱いていた誰かを幸せにしたいという、
その夢を実現するといった目標に初志貫徹した精神で行動されている所にとても魅力を感じました。
実際、ビジネスモデルだけでなく、「ごゆるり」で提供される食事にも真崎さんの思いを思いっきり詰め込んでいる印象を受けました。
食べるという分野を通して、みんなをhappy にする空間を作る、そんな空間を提供する「ごゆるり」に今後も是非ご注目下さい!
そしてSIF読者の方にも是非応援いただけるとありがたいです。