今回は起業家さんに新規事業立ち上げにまつわる「知りたかったけど他には載ってない実際のところ」をお届けするインタビュー記事第四弾です!
第3回の中村さん(eboard)からは株式会社とNPO法人の違いや、NPO法人ならではの難しさを伺いました。続く今回はなんと、舞台を海外に移しインドで起業を成し遂げた女性起業家のお話を伺うことに成功しました!!
皆さんは起業する人を特別な人と思っていませんか?
起業を考えても不安が大きく、ぼんやり考えて終わっていませんか?
起業はもう誰にとっても遠い存在ではなくなりつつある時代です。
このシリーズを読んでいただければ、全く起業を考えたことのない方でも起業のイメージや考え方を知ってもらうことができます。
だからこそこの記事では普段はお話してもらえない新規事業立ち上げ時の地道な活動や、ディープな裏話をSIFメンバーが遠慮なく掘り下げ公開します!
今回はインドでデジタルマーケティング分野で起業された見上すぐりさんに登場していただきます!後半ではお客さんとの付き合い方、チームの作り方などすでに経営をされている方でも参考になるお話をして頂けました!
【プロフィール】
見上すぐりさん (Storytelling LLP CEO&Founder)
信託銀行に勤務後、ベンチャー企業で海外IR・マーケティング活動を支援しながら、同社のウェブコンテンツ制作を担当。社会人10年目にして、自分が好きだと思える仕事、マーケティングと出会う。2015年の産休を機に、SEOライターとしてパラレルワークを開始。2016年に夫の転勤でインドへ6ヶ月の長女と移住。2017年、インドで次女出産。3子の流産をきっかけに内省にハマり自分の人生のパーパスを見つける。2019年、インドでデジタルマーケティング戦略の立案・実行サポートをするStorytelling LLP を創業。 明治大学商学部、グロービス経営大学院単科「クリティカル・シンキング」「マーケティング・経営戦略基礎」「マーケティングI」修了、国立シンガポール大学リークワンユースクール「ASEAN地政学プログラム」卒。
Storytelling LLP
■ 事業内容:日本とインドを拠点にグローバルビジネスを展開される企業のデジタルコミュニケーション活動のサポート
■企業サイト:https://storytelling-jp.com
- デジタルコミュニケーションの戦略立案・実行サポート
- ウェブサイト、ライディングページ最適化、キーワード設定、コンテンツ企画、SEOライティング
- 日本・インド向けメディア向け広報・PR活動を支援
- ウェブ市場分析、ソーシャルリスニング、オウンドメディア分析による施策の最適化
【取材】SIF 2名 川上(代表)・RIKUHIRO
起業に至ったきっかけと経緯
2人のお子さんを持ちながら、創業3年目になる見上さん。インドでデジタルコミュニケーションの会社を立ち上げるという選択に至った経緯について伺います。
RIKUHIRO:なぜインドで起業という道を選ばれたのでしょうか。
頑張りすぎた一流企業の秘書時代
一番最初は大手金融で秘書業務をしていました。
当時から仕事は大好きで、与えられた仕事は150%で返すような社員でした。
自分のパーソナリティと大手金融機関特有のカルチャーが合っていないことに気づき始めて、ただやめる勇気もないまま5年間。
でも、当然そのうち身体にも心にもムリがきて、精神的にも体力的にも仕事を続けるのが難しくなってしまったんです。
これを転機に結婚をし、退職をしましたが、心身ともに健康でない状態では夫婦生活もうまくいかず、ついには離婚することになってしまいました。
当時は社会的に終わったような気がして、本当に落ち込みましたね。
でも、落ちるところまで落ちたらある時、「もう捨てるものはないから自由に生きてみよう!」って振り切りました。
ベンチャーへ転身でマーケティング Lover覚醒!
好きなことを好きなようにやってみようと思い、そのあとはベンチャー企業で働くことにしました。
2社目のベンチャー企業は、創業2年目だったこともあり、本当に何でもしましたね。
そこで良かったのは上司がアメリカ人の方で、徹底的に米国式のインバウンドマーケティングを基礎から教わることができたことです。
オンラインとオフラインを使ってこんなにストラテジックにビジネスが出来るんだということを知り、初めて自分が没頭できる大好きなことに出会えたんです。
自分の幸せを見直す転機
その後、夫の仕事でインド駐在に帯同することになったんですが、次の転機は第三子を流産してしまった時です。
この時も本当に落ち込みましたが、その時に自分が子どもに幸せにしてもらっていたことに気づいたんですよね。
そして、このままでは「家族がいなくなった時に自分が不幸になる」って思いました。
だから自分の幸せは自分で生み出す仕組みにしないと!って考えたんです。この時に起業を決意しました。
全ての点が繋がった
社会人人生、まもなく20年になりますが、秘書業務をしていた時代、ベンチャー時代と、今振り返れば全てが繋がっているように思います。
どんなことも150%で打ち返し、そのために必要なものは勉強するサイクルを繰り返す。
その点が全部つながって、今の付加価値を出せているんだなって思います。
困難の連続!海外での起業の実態
日本で起業することすら難しいのに、インドでの起業となれば相当な苦労があったことが想像できます。女性起業家として海外でビジネスをする上での困難や、インドだからこそ出来たことを伺います。
AKI:実際インドで起業するって大変だと思いますが、どんなところに苦労されますか?
たった1人の言葉に後押しされて一歩を踏み出せた
当初は夫を含め、誰にも起業に賛成してもらえなかったですね。
お金も当然かかりますし、海外で起業する駐妻なんて聞いたことがない、みたいな。起業家の先輩に相談しても「インドでの起業は大変だよ」って言われました。
でも1人だけ「企業なんて簡単ですよ、僕手伝いますから」って言って下さった方がいたんです。
それで一歩を踏み出せました。その方には今でも業務のサポートをしてもらっています。
衝撃と感動!インド人の働き方と思考法
インド人は、自分をすごく大事にしてるように思います。
「日本人は軸が外側の社会にあって、インド人は軸が自分の中にあります。」とおっしゃった方がいましたが、まさにそのとおりだと感じます。
インド人は自分の欲しいもの、したいこととか自分の運命をすごく考えてるなと。
そういう、自分と異なる捉え方や視点を知ったことで、マインドセットができました。
自分起点で物事を考えるようになったから、自分のキャリアの点を繋げられるようになったのかもしれません。
その一方で、仕事上でのインド人とのトラブルや揉め事も多いです。
日本人とインド人の仕事に対する期待値には大きなギャップあります。
それでも、すり合わせていければ良いんですが、そもそものカルチャーや歴史、経済のフェーズが異なる日本とインド。
埋められないほどのギャップがあることに気づきました。
当初は、それをマネージできない自分にも相手にも頭に来ていましたが、自分が勝手に期待値を上げていたこと、自分がいかに日本基準で物事を考えていたかを知るよいきっかけになりました。
海外で仕事を獲得するには!?
AKI:最初はどのようにして仕事を獲得していったのでしょうか?
最初は私にできること、したいことを色んな場でどんどん発信していました。
これが社会のニーズにマッチしていたようで、自ずとオファーは来るようになりました。
自分で仕事を獲得したという言うよりは、お客さんが新しいお客さまをつなげてくれた感じですね。
世の中に課題は山ほどありますし、どんどん生まれてきます。その新たな課題に自分の能力がポコっとハマる感覚。
私はそういう時を見逃さないタイプ。とにかく面白そうなことがあればダッシュで行って「私できます!」って言うみたいな。日本でやったらヤバいんでしょうけど(笑)
元々はオウンドメディアの運営を専門とするデジタルマーケティングの会社だったので、PRや広報は全然やっていなかったんです。
それでも、メディアにもっと情報を出していきたいというお客さんのご要望を知り、必要な仲間を引き込んでいく中で、より発展するようなかたちで今のデジタルコミュニケーションという業態になりました。
見上すぐりさん流のチーム作り
次は見上さんのチーム作りについて伺います。周りに知り合いの少ないインドという国で、女性起業家としての一歩をスタートした見上さん。どのようにして海外でメンバーを集めていったのか気になります。
RIKUHIRO:見上さんはチームのメンバーをどのように集めているんですか?
チームメンバーは共感で集める
駐在妻のネットワークで繋がることもありました。
駐在から帰国して働く機会を探している方や、これから子どもを産むから時間が自由に取れない方とか、海外に関わっていたい方とか。
他にもイベントに登壇させて頂いたり、私はインスタグラムでインド向けにマイクロインフルエンサーとしても活動しているので、時々そちらでもリクルーティングさせて頂いてます。
頑張る人に頑張る機会を
私は頑張りたいって思う人に対して機会が与えられるべきだと思っています。たった一回の面接や、評価制度、学歴でななくて。
一番パフォーマンスが出るのはやっぱり頑張ろうとしている人です。
そういう人が5年くらいするとすごく伸びると信じています。
頑張る人たちに機会提供ができるプラットフォームでありたいし、それが企業理念にもなっています。
実は今、全員が業務委託という形をとっています。9時から17時で働けない方ってたくさんいますよね。
そういう方にも平等に機会を作っていきたいんです。なので仕事は全部プロジェクトベースで原則、オンラインにしています。
自分の失敗談をシェアする
メンバー全員がプロジェクトベースで働き、お互いが普段から全体を見えてる訳ではないので、定期的に打ち合わせをします。
そこでは私自身の失敗体験もシェアするようにしています。
インド人と働く中で、私自身も少しずつ自己開示ができるようになってきました。
失敗からの学びをシェアすることで、リスクを減らしていると感じます。
社員にとっても「自己開示をしていくことで良いことが起きるんだ」「ここは自己開示しても良い場所なんだ」って思ってもらえるような会社にしていきたいんです。
事業を育てていく上で大切なこと
見上さんはビジネスだけでなく、会社や社員の在り方・生き方についても深く考えていることが伝わりました。そんな見上さんの大切にしていることについて、もう少し深く伺います。
テクノロジーと自然
コロナ禍を経て、「地球と調和しながらより人間らしく生きる」という形に変化してきました。
起業したてとコロナ禍が重なり、1年くらいがむしゃらに働き、家族を顧みる余裕がありませんでした。
テクノロジーは、時間や場所の自由を与えてくれましたが、私に愛を返してくれないんですよね。これだけでは人として満たされない。
だからこそ、精神的にも物質的にもより人間らしい生き方をしたいという欲求を大切にするようになりました。
見上すぐりさん流の顧客へのこだわり
インドには、日印をカバーできるデジタルコミュニケーションの会社が少ないので、いまはどんどんお客さんが増えています。
ただその中でも、「マスト」の部分が重なるお客さまとのパートナーシップを大切にしています。
弊社は年間契約ですので、長期的なプロジェクトが前提となります。その場合、お互いのマストとなるビジョンが重なっていないと双方のモチベーションが保てないんです。
過去、一番事業に貢献してくれていた会社があったんですが、それでもマストが重ならないということで、最終的には取引を引き上げる決断をしました。お客さまも同じ気持ちだったと思います。
そんな経験もあり、お客さんとの自社の想いが一致することが一番大切なことだと気づいたんです。
そうでなければ、長期的には会社は成長しないと思っています。
マストを共有して、一緒に達成することで、オキシトシンが生まれる仕事だからこそ、生産性も高まりパフォーマンスを最大現に発揮することが出来ます。
見上すぐりさんが目指す形
起業・育児をインドでこなす見上さん。インドでの人との出会いを経て、見上さんも会社も大きく変化しているようです。最後に、今後の展開について伺いました。
企業としての今後の成長
自分と会社にとって嫌なこと、ネガティブインパクトのある要素をきちんと理解して、良い方に動く要素をたくさん取り入れられるような状態の会社にしていきたいですね。
自分探しは永遠に続くと思うんですけど、一方で会社はいまのような仲間と歩めれば、自然と大きくなると思います。
SDGs × 日印企業のデジタルコミュニケーションサポートという掛け算なので、超ニッチ。あと5年ほどはグロースする市場というのは見えています。
ただ、その先の10年も生き残れるように、どういう方とパートナーシップを作っていくのかはこれから考えていくところですね。
ありのままのカオスを見てもらいたい
日本では特に、女性がお母さんになる時にお手本にしたり学ぶ機会が圧倒的に少ないと思うんです。
だから私は、良いことも悪いことも全部見せていきたいと思っています。
起業しながらインドで子育てする日常が、どれだけぐちゃぐちゃでカオスかというストーリーを発信していきたいですね。
必死でボサボサになりながら奮闘してる姿をどんどん見せていきたいなって思っています。
自分なりの家族の幸せ
実は私、ワインがすごく好きなんです。
子どもの頃から私の家族の幸せの象徴は、ワインを食卓で囲むというのが代々続いています。
今、アグリテックのお客様のサポートをさせていただいていることもあり、将来は、インドでアグリテック×ワイン農園できないかなと。80歳くらいになったらワイン農園で家族とインドの仕事仲間とワインを囲みながら、気持ちに余裕のある人生を送りたいです。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
2人のお子さんを育てながら、海外で起業された見上さん。
起業する女性が増えてきた中で、見上さんの働き方や人生についての考え方はとても参考になったのではないでしょうか。
前回のTiger Mov代表の菊地さんも、子育てをしながら企業の代表を務められ、母親でありながら新たな働き方を教えてくれました。
今後も起業家インタビューの記事を公開していきますが、それぞれの理想の働き方や人生観に注目していくと新たな発見があるかも知れません。
起業したいけどやり方が分からない方、今は出来ないと諦めている方、ちょっと気になる、という初心者の方に分かりやすい記事を今後も作っていきます。
我々SIFもまさにスタートしたばかりです。このSIFジャーナルやSIFの活動に興味のある方はぜひこちらもご覧ください。
幸福度No1の国、フィジーに、SDGsにつながるメディア。”Social Innovation Fiji Journal”とは
最後までご覧いただきありがとうございました。